「あ、あたし……黒岩くんのことが好きなのっ!」
自分の気持ちをすべて吐き出すような力強い告白に、心臓がチクッと痛んだ。
緊張がこちらにも伝わってくる。
“黒岩くん”って、“黒岩先輩”のことだよね?
まさか、あたしといっしょで黒岩先輩のことを好きな人がいたなんて。
黒岩先輩は、いったいなんて応えるんだろう。
「悪いけど、俺はあんたの気持ちには応えられない。ごめん」
先輩の声は、どこか冷たくて淡々としていた。
バタバタと忙しく聞こえる足音がこちらに向かってやってくる。
そして次の瞬間、ドアがガラッと音を立てて開くと、女の人がそのまま走り去っていった。