「お前は、俺が嫌いなのか?」

「そ、それは……」

「嫌いじゃなきゃ、問題ねぇだろ」



そう言って、あたしの手を離そうとせずに歩き始める黒岩先輩。


そ、そういう問題なの!?



「明莉……」

「な、なんですか?」

「絶対に、俺のそばから離れんなよ」



――ドキッ……。


突然の先輩の言葉に、胸が高鳴った。



「先輩、今日は熱でもあるんですか?」


「そんなの、あるわけねぇだろうが。今日の俺は至って普通だ、バーカ」



いつものようにあたしのことをバカにしているのに。


なんだかあたしの知ってる黒岩先輩じゃないみたいで、調子が狂う。


声を荒げないから、そう思うだけ?

文化祭だから、遠慮してるのかな?


それでも、今日の黒岩先輩はあたしの心臓を壊しにかかってる。



黒岩先輩は、いったいあたしをどうしたいんだろう。