「黒岩先輩、女の子に手を挙げるなんてヒドいですよっ!」
「うるさい、手加減はしただろ? ってか、ワッペンつけるのにどんだけモタモタしてんだよ」
「しかたないじゃないですか!」
だって、これをひとりでつけるの難しいんだもん。
それなのに、どうしてみんなそんな簡単につけられてるの?
「ったく……貸せよ」
あたしを見かねた先輩は、あたしの左腕にワッペンをつけてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「これくらい、どうってことないから」
黒岩先輩のことだから、てっきり「さっさとつけろっ!」って言われると思ってたのに。
先輩って、思っていたよりも優しいところがあるんだな。
「ほら、巡回行くぞ」
「はい」
今日はいつになく優しい先輩に戸惑いながら、あたしは先輩と巡回にまわった。