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残暑が残る9月下旬。
あたしたちの高校では、10月上旬に開催される文化祭に向けて、その準備の真っ最中だ。
あたし、早村明莉。
高校1年生。
学校行事が大好きで、文化祭実行委員に立候補したわけなんだけど――。
あたしは文化祭実行委員長の黒岩誠先輩に“また”呼び出しをくらっていた。
「明莉、お前はいったい“何”実行委員なんだ?」
「ぶ、“文化祭”実行委員、です……」
「だよなぁ?」
「は、はい……」
腕と足を組みながら、あたしを見下ろすようににらみつける黒岩先輩。
見た目通り、先輩はクールでまったくと言っていいほど笑わない人だ。
黙っているだけで迫力がある先輩だけど、実行委員人たちには優しくて慕われている。
それなのに、なぜかあたしにだけは厳しい。
それが不公平で納得いかなかったあたしは、真っ向から先輩に噛みついてきた。
だけど、今日はいつもと訳がちがう。
だって、黒岩先輩が怒っていらっしゃるのは――確実にあたしのせいだから。