♢同居のワナ

 基本私の両親がいて、担任がいて、姉がいなくて……ということが我が家の普通になっている。姉はたまに電話やメールで連絡を取っているらしいが、彼氏より音楽っていうタイプで、連絡を取らないことも多そうだ。

 両親は共働きで昼間は在宅していないし、先生は朝から晩まで部活の指導や学校にいるから自宅にはいない。私もサッカー部のため、部活でも教室でも自宅でも―――先生と必然的に一緒にいることが多くなる。この家はたいていの時間、ほとんど人がいない。

 私も高校三年なので、進学を希望しているから手を抜くこともできず、勉強に運動に明け暮れる毎日だ。私は、体育大学を希望していた。それ故、体育大学卒業の流牙の存在は、進路面では心強かった。

 部活が終わり、家に帰ると私はまずシャワーを浴びる。
 汗でべたべたな状態から少しでも早く脱出するべく、一番風呂は私と決まっていた。今日は、洗面所の風景がいつもと違った。風呂から出ると――先生がいるではないか。帰宅して、洗面所に手を洗いに来ただけだったのだが。タイミングが悪い。これだから同居は嫌なのだ。

 私はバスタオルを巻いていたが、髪は濡れている状態だったし、完全に気を抜いていた。まさかお互いここであうとは……状態。

 先生は一瞬固まって、
「悪い、すぐ行くから」と急いで出て行った。

 たったそれだけのことなのだが、先生の女慣れしていない雰囲気の気まずさと、彼氏いない歴=年齢の私の男性に対する免疫のなさが、気まずさを一層引き立たせた。

 ふと見ると、洗濯機の中に先生が着替えたであろうTシャツとトランクスが入っていた。部活の指導で汗だくだから、学校の更衣室あたりで着替えたのだろうけど。

 男の人の下着なんて……お父さん以外のものを初めて見てしまった。
 たったそれだけのことでも赤面する私。
 男の汗くささすらちょっとかっこよく感じてしまう私。別に先生のものだから、ではない。どんな男性の下着でも見てしまったら、ちょっと恥ずかしくなる年頃なのだ。

 一緒の洗濯機で洗われているのか……。
 逆に言えば、私の下着も洗濯機に入れるときに、先生から見えてしまう可能性があるのだ。何か対策をしなくては……私は真剣に考えていた。

 風呂から上がると、いつもより若干気まずい雰囲気の先生と私。
 いつもどおりの両親と4人で食卓を囲む。既に家族だ。
 お姉ちゃん、しばらく海外出張なんて……早く帰ってきてよ。