____
「んん、なんか、ご機嫌ななめだな灯織」
ポテチをつまみながら、俺の顔を覗き込む幸大。
そんな幸大の顎のラインに沿って手を添え、耳を指先で撫でる。
「っ!…な、に」
顔を近づける。
「どう思う」
「ぅえっ?…どうって……え?」
そうだよな、そうなるよな。
(偏差値以外は)普通の男子高校生代表、幸大はそうなるよな。
顔を青くして、口端がヒクヒクと痙攣する。
「お前、男に迫られたことあるか」
「は、え!?どうしたんだよ、灯織」
「灯織、男に迫られてるのか、今」
机に突っ伏す。
朝から、皇の視線がうるさい。
とはいえ、見方がプロだ。
んなの、今まで気付くわけねえ、って言いたくなるような。
教室では話しかけてこない。
まあそりゃ、金持ちの息子だしな。
下手に動けねえんだろ。
あいつのいる環境が、感情を前に出さなくさせてるってことか。
「ゲイならまだ分かる。ゲイじゃねえのに俺を選ぶ要素って何」
「……珍しく灯織が萎えてるな」
「それの確認に俺を使うなや!ビビったわ!」
「だってお前、普通の男子高校生代表だろ」
目線だけを幸大に向ける。
「なんだそれ。やっぱ灯織かなり堪えてんだな?」
終わりだ。
幸大に心配されたら終わりだ。