生々しい感触に耐えながらも、体の力が抜けていく。


酸素薄い、動けねえ。


……長すぎるだろ。



グッ


……ん?

それに気付いた俺は血の気が引いていく。


思いっきり噛んだ。

皇の舌を。



「ぃっっっ……!」



俺の口の中も鉄の味になる。

ドンッと皇の胸を押して立ち上がる。


「…っ、はぁ、はぁ」


肩で息をする。

がちで……こいつ……



「てめえ……何、勃たせてんだコラ…」


俺の脚に、皇の硬いブツが当たった。


変わらない真顔で俺を見上げる。


「ぶっ殺す」


と言いつつ、走って逃げる。


階段を駆け下りた先、人にぶつかった。


「あ、すんませ、」


見上げて、見上げなきゃ良かったと後悔する。


「…血、付いてんぞ」


柿谷慎矢……。


「ども」


階段の折り返しで、上から皇が降りてくるのが見えた。

なんで今なんだよ……


2人が鉢合わせする構図が、何でこうも。


足が、止まる。


「へえ、なんかあった感じ?なあ、アイツ頭おかしいだろ」


今なら全力で頷ける。

けど、柿谷がどんなやつなのか、まだあんま分かんねえし。


あーもう!!!



「ああ」


返事をすれば、皇の真顔が少し崩れた気がした。