同日の深夜。二人はレストランから帰宅した。嶺奈の左手薬指には、新しい指輪が着いている。それは、二人の間に交わされた新たな契約の証だった。

 二人でベッドに向かい合うように横たわり、眠るまでの間、照明を暗くした部屋で、静かに語り合う。
 
 彼は慈しむように、嶺奈を自身の胸元まで抱き寄せる。彼の体温が心地よくて、つい目蓋を伏せて、安心感に身を委ねた。
 
 この穏やかな時間が、永遠に続けばいいのにと、胸中で秘かに願う。

 私と良平さんが初めて会ったという日のことを、彼は本当に話してくれるだろうか。

 少し不安を覚えながらも、嶺奈は意を決して口を開いた。

「教えてくれる? 私と初めて会ったときのこと」

 これでもし、誤魔化されたなら、この話題について触れるのは、もう辞めよう。そう思いながら、彼の言葉をじっと待つ。

「教える約束だったね。……どこから話そうか」

 嶺奈の言葉に彼は穏やかに答え、思案する。

 そして、ぽつぽつと嶺奈との邂逅を語り始めた。