岳、私が元気になれるように、いっぱい頑張ってくれた。

 私は風邪をひいた記憶がない。
 もしかして、生まれてから一度もひいていない?って思うくらいに。

 だから不安だった。

 熱くてフラフラして意識がもうろうとして。
 今すぐにも倒れてしまいそうだった。

 目を閉じれば、このままこの世界からいなくなってしまうのではないのかと思った。

 本気で岳は私の心配をしてくれて、看病をしてくれた。

 そして今、告白を受けた。
 妄想ではなくて、リアル!

 胸がときめいた。
 最大級のトキメキ!

 書かなくちゃ!

 本棚からノートを出し、手に取ると机に向かった。
 新しい告白シチュエーションを『☆家の義弟バージョン』に急いで書いた。

 記憶がカラフルなうちに書く!

・熱が出て、苦しんでいる私。義弟が本気で心配してくれて看病してくれる。私は元気になってきた。凄く心配して泣きそうな義弟に、風邪なのに大袈裟だって事を言ったら「風邪でも、油断できないよ。大好きな、愛してるあかねがいなくなってしまったらって考えたらもうムリ。僕……本当にあかねが好きなんだって気がついた。あかねの恋人になりたい」と、さりげなく告白ワードも投入される。


 私は桃色のペンでそのシチュエーションを丸く囲み、その下にこう書いた。

 『リアルで胸キュンして、ときめきました。このシチュエーションが優勝♡』って。

「多分、このノート見るの、二回目だと思うけれど、新しく書いた部分、読んでみて?」

「えっ? 読んだのバレてたの?」

 彼は焦っていた。

「バレてたよ! まぁ、早くこれ、読んでみて!」

 ノートを渡した。

 岳は私を恋愛対象としてみている。
 私の事、お姉ちゃんとしてみていないのかな?
 みてないよね、きっと。

「お姉ちゃんって、ムリして思わなくてもいいし、呼ばなくてもいいからね!」

「うん。おとうとじゃないし」

 岳は返事をした。

「私も、義弟としてみれないかも」

 なんか、岳を見ているだけでドキドキするから。
 
 
 ――あれ? この会話、昔した事あるかも。