「お前はそれ以上鈴蘭を視界に映すな」


夜明さんが私の肩を抱き、自分のほうへ引き寄せた。


突然触れられて、びくりと肩が跳ねる。


「それより鈴蘭、両親は何時頃に帰宅する?」


え?


どうしてそんなことを聞くんだろうと一瞬思ったけれど、さっきの言葉を思い出した。


『今日の放課後、鈴蘭の家に行ってご両親には俺から説明する。引っ越しの準備も使用人に頼む』


引っ越し……。


本当に、あの家から出ていくんだ……。


家族にもお世話になったから、ちゃんと話をしなきゃ。


お父さんも……最後くらいは、話してくれるかな……。


恐怖から解放されることに安堵しているけれど、またいつ家に戻るかわからない。