もう十分お金を使わせてしまっているけど……こんないいもの、もらえない。


「緊急時に連絡を取る必要もある。ないと心配だ」


夜明さんはそう言って、スマートフォンを私の前に近づけた。


「俺のために持っていてくれ」


なんて……優しい言い方をしてくれるんだろう。私が気を使わないように、自分のためだと言ってくれるなんて。


夜明さんの厚意はいつも優しすぎて、私はそれを向けられるたびに、胸がいっぱいになる。


「ありがとう、ございます……」


結局いつも、夜明さんに甘えてばかりだ……。


「おい、ケースを持ってこい」


夜明さんの言葉に、左藤さんと右藤さんが部屋を出ていった。


戻ってきたふたりは、大きなガラスのケースをふたりがかりで持っていた。