「甘いジュースを少量ずつ持ってきてやってくれ」


何があるのかわからなかった私の代わりに、夜明さんがそう答えてくれる。


「ああそうだ、これを渡しておく」


テーブルの上に置かれた、長方形のもの。


見覚えがあるそれに、私はパチパチと瞬きを繰り返した。


「スマートフォン……」


どうして……。


「持っていないと言っていただろ。ないと何かあった時に困るからな」


これを、私に……?


ふと、ルイスさんとの会話を思い出す。


私にスマートフォンを用意させると言ってくれたルイスさん。婚約者にはスマートフォンを渡す習慣でもあるのかな……?


いや、それにしても……。


「こ、こんな高価なもの、いただけません」