おい。待てって。
なんて、俺は頭の中で混乱しながら、話を止めてくれなどを伝えると。

やめない。

あいつが。

楓が。

なんで、やめないんだよ………。
と思いながら、楓を見ていると。

楓が、俺の良いところを喋りやがった。

そりゃあ俺は……楓が良いところを言ってくれるのを止めれなかった。
なんせ、俺の良いところを……俺がめちゃくちゃ好きな人に言われているのだから。

だけど、少しだけ、楓は言っている時、切ない顔で俺のことを言っていた。


そして、最後に、

「結婚破棄してくださいっ!!」
なんて、堂々と大々的に大声で言うなんて。

意味不明だよ。
楓。

俺はゆっくりと壁にもたれながら、床に座る。

そして、楓が話していたことが意味不明すぎたから、一旦、簡単に整理した。

「何?お別れ?」
なんて言わせてもらえる隙が無かった。

俺が楓の細い腕を掴もうとしようとした時、すぐ楓はメイド喫茶に戻ったし。

文化祭って卑怯なところ。
すぐ、逃げれる。

俺は、芸能人だから、逃げ回っても…すぐ、気づかれるし。


俺の良いところを言って、『結婚破棄』って。

そもそも、俺が悪いのか?
だって、俺の大好きな楓に100万円をプレゼントしたんだぞ?
というか、俺は花奈に頼まれたから。

断り切れなかった。









楓が俺の(うち)に来る何ヶ月も前のことだ。

突然、俺の家に花奈がやって来た。
びっくりした。
怜も慌てながら、紅茶の準備をしてくれていた。

「ねえ。義數」
「何だ」
「私のご祝儀兼結婚破棄のお金、もらってくれない?」

大きい石がど直球でごつんと俺の頭にぶつかった。

なんで、漏れてんだよ………。

「はぁっ?」
と俺は即座に言ったが、心の中、頭の中はパニクっていた。


……どこから聞いた?
楓との結婚を。お見合いを。

どこにも漏らすなと怜にも言った。
何だ?噂か?もしかして、専務にスパイがいるのか?


いや、まさか。
あの正志ジジィと最初に対面した時か?

俺の頭の中で自分の推理がどんどん膨らむ。


「あぁ。どこから聞いたかって?……パパのスパイが調べてくれたのよ」

「はっ?」

何もかも分からない。そして、聞きずてならない。

「正志様の対面、会合の時、SPがいたでしょ?そのSPの中の1人がパパのスパイ」

そう言い終わった後、紅茶を手で綺麗にカップを取り、綺麗に紅茶を飲む花奈。

俺と花奈の関係は、小学生からの付き合いだ。
そして、花奈の祖父は正志ジジィと対等に話せる世界的グループ《縁–EeN–》グループなのだから。
花奈は独立して、ファッションブランド《HIYOKO》を立ち上げて、モデルもやっている。

「……おい。花奈。賄賂なんて、卑怯だな?」

「違う」
すぐ、花奈は拒否する。

俺は理由を聞いてみた。
「はぁっ?じゃあ何だって言うんだよ?」
「正志おじ様からのご祝儀よ」
「はぁっ?……お前、最初、私のご祝儀何やらとか言ってたじゃねえか」

「っ……それは…」
ふいっと花奈は視線を俺から、外す。

「じゃあ……正志様からのご祝儀をもらっておくよ」

それが。
100万円だった。

正志様(心の中では正志ジジィだが)のご祝儀が100万円だったのだ。
100万円?そんな多いのか?と思って、花奈に聞いてみたら。

「まぁ。正志おじ様から、ご祝儀兼婚約破棄を願っていたから」

ふんっと俺から花奈は視線を外して、花奈が黒いキャリーケースを持って来る。

なんか、正志ジジィの話をしてから、花奈が視線を外して来る。
その違和感が当たってるといいが、心の中で閉まっておくとしよう。

だけど、気になるから違う視線のところから、質問するか。

「……お前、本当に正志様が言ってたのを聞いたか?」

「聞いていたわ」

「そうか……じゃあなまた会おう」

「うんっ。じゃあね」

「お前の笑顔みんなに見せたらいいのにな?」
「ハッ」と笑いながら、花奈を見たら。

花奈は目を開いて、
「……っあんた、そんな顔見せるの、私だけ?」
と言って、少しだけ顔を赤く染めながら、俺を見る。

「……どうだろうねぇ」

今のは自然だし。
楓しか見せねえよ。これからは。

と思いながら、花奈を見たら。


「……ねえっ!私さ……「すいません。花奈お嬢様、義數様はこれからドラマの撮影がありますので……すいません」

「……怜!邪魔しないで!」

「花奈、駄々捏ねしなくていいだろう」

「うるさいっ!あんたは……っ……もうっ()い!!」
と言いながら、ズカズカと足を大きく上げて、俺の家から出て行った。


「義數様……これからドラマがあるというのに……!!」

そうだ。あと5分ほどしたら、家を出ると怜が言っていたな。
……忘れていた。

だがな……?

「いや。怜、花奈に牽制しておいた方が良かっただろう」

そう。花奈はきっと、俺と楓に結婚破棄をして欲しかったから、賄賂という金モノを俺に渡したのだろう。
牽制しておいた方が……まぁマシな方だと俺は思っている。

だからだぞ?怜?
そのことを俺は怜に言うと。

「……っそれは…」
と図星を突かれたような声で俺を見る。

「まぁ……100万円は最初に楓に見せて、保留としよう。……それでいいだろう?怜?」
「……はい。義數様が言うのなら…」
怜は少しだけ、お辞儀をして、「車を用意しておきます」と言いながら、俺の家から出て行った。

……はぁ。

楓にどう言えば……。



と思っていたが、俺をお金大男なんて言うなんて、そんなこと、俺はまだ知りもしなかった。