私は分からないまま、魔王様に連れて行かれる。
混乱の言葉が頭の中にいっぱいあるぐらいになりながらも、魔王様が腕を引っ張る背中を、自分の視界にとらえてしまっていた。
……何で。こんなに、胸から込み上げてくるんですか?
何かが込み上げてきます。
魔王様。
なんて思いながら、連れ去られていると。
「ここなら、大丈夫」
空き教室の扉を開きながら、そう言う、魔王様。
そして、魔王様は旧教室なのか、空き教室の鍵を閉めて。
「………何で、こんなところ知ってるんですか?」
私は魔王様に聞くと。
「俺がここの学校の出身だから」
「へー……ってえっ!?そうだったんですかっ!?気づきませんでした!!」
私は何故か心の中が嬉しくなってしまう。
何にも分からないのに。
ワクワクでもないし。
どきどきでもない。
嬉しいの言葉、一つだけ。
「……で?あれが、元カレ?」
「……はい。そうです。」
私は少しだけコクっと頷くと。
「へー……?そうなんだ?」
「ふーん?」と言いながら、私の顔を見る、魔王様の顔が怖すぎた。
そして、私を教室の壁に追い詰めて。
衝撃的な言葉が出てきていた。
「キスしたい」
と。……やばいことを言い出した。
ど、どういうこと?!
分からないです……!!魔王様……!!
「……っ!?それは演技だけ……「好き。ちょーう好き。」
「………えっと!?」
突然の国民的俳優の告白に、戸惑ってしまう私。
だけど、告白だと分かってしまう私。
「……俺は、お前が好きで好きでたまらねえ」
「……っ!?」
「好きで、好きでたまらねえのに……お前は元彼といい感じになって。何?俺に嫉妬心を味合わせたいの?」
ドンッ!と壁ドンをしながら、私の顔を見る魔王様。
…だけど、魔王様の顔は何故か、切なさそうな。すごく怒りそうな顔で。
「……ちがっ「違う?…違くないよ。俺の嫉妬心狂いそうだけど?」
もう無理……!!!
「どう言い訳すれば……!!」
私は混乱しながらも、声を出しながら、考えてみる。
もう何も分からなくなって、涙腺が少しだけ緩んで。
その涙腺が緩みながらも、私は魔王様の顔を見ると、顔が赤くなっていて。
「……俺にキスしてくれたら、全部許す」
「えっ……!?」
「えっ?じゃない。マジで、狂うから……キス、して?」
……っ!?
私の顔を伺いながらも見る、魔王様の顔は。
すごく甘々な顔で。
……っ。
もう、魔王様の顔は眩しくて。
……だけど、眩しいより、胸の高鳴りが耳に響いて。
そして、顔も赤くなってしまう始末で。
「……ダメ…です」
「いやって言ったら?」
「……それでもダメ、で、す」
「泣き顔が可愛い、俺の未来の嫁にキスしたいんだよ?」
「……っ?嫁?私ですか?」
「もう。鈍感娘……だけど、そこも……」
と言いながら、私の頬を魔王様の手は強いけど優しく掴んで。
私の口と魔王様の口が……
もうすぐ重なりそうになる。
だけど。
私は思い出してしまう。
花奈さんのことを。
「ダメ……です。」
私は少しだけ、魔王様の胸を両手で押して。
花奈さんがいるんだから。
ダメ……なんです……!
「はぁ〜〜〜っ。どれだけ、我慢させる気?」
「……それは…「我慢できねえ、って言ったら?」
「無理です。もう、胸が…崩壊しちゃいま…す!!」
「好きだ……もう、楓しか見えない」
へっ?!
一瞬だった。
口と口の距離が遠くなったと思ったら、短くなり。
私の口と魔王様の口が重なってしまっていた。
「んんぅっ……」
キスの息継ぎのときに、
「好き。好き。大好き」
それを、私だけが聞き取れる声で。
甘々な声で言う。
魔王様。
だけど、今は、魔王様ではなく。
甘々な王子なのかもしれない。