最後の花火が夜空に溶け、人々が帰路を急ぎ始めた。

はぐれないようにお母さんと手を繋ぐ子供、

花火の余韻の残る鼓膜に甘い言葉を囁く彼氏に頬を紅潮させている彼女、

腕を組んでゆっくりと歩く老夫婦...。


色々な人を見送りながらあたし達も日葵と弓木くんの姿を捜した。

2人で良い感じになって帰ったのだろうとか思うことなく、あたし達のいるところに戻ってくることを信じて疑わなかった。

そうして花火の美しさを目に焼き付けるよりも長く人々を見続け、半ば諦めかけていた時...


「お～い！みんな～！」


聞き覚えのある高くて透き通った声が鼓膜を震わせた。

声のした方を見ると、そこには見知らぬ人が紛れ込んでいた。


「えっ、もしかして...」


戸塚くんが目を丸くする。

鶴乃さんは口元に手を当て、その姿をじっと見つめる。

あたしは何が何だか分からず、誰かが言葉を発するのをひたすらに待つ他なかった。

やがてあたし達の目の前に日葵と弓木くん、そして謎の男子がやって来た。

そして、日葵が鶴乃さんの心配を裏切るハイテンションで話し出した。