あたし達が食料を持って帰ると、まさかの事態が起こっていた。


「うたた寝してたら、日葵がいなくなっちゃって。電話もメールも反応なくて...」

「え?いなくなってどんくらい?」


いつも冷静な鶴乃さんが動揺しているのを見てすかさず戸塚くんが優しい声音で話しかけた。


「もう20分は経ってる。買い物に行くにしろ、お手洗いに行くにしろ、日葵が私に黙ってどっか行くなんて今までなかったから心配で」

「そのうちひょっこり戻ってくるんじゃね?荷物もあるし、とりあえずおとなしく待ってた方が...」

「俺、見てくる」


戸塚くんがレジャーシートに荷物を置き、どっこいしょと座るや否や弓木くんがそう言った。

ヒロイン迷子からのヒーロー参上、2人きりで良い感じになる...っていう少女マンガにありがちなパターンかと思った。

いつだか、おばあちゃんが言っていた。

人生、なるようにしかならない。

つまり...そういうこと。


「行ってらっしゃい」


あたしのその一言が号砲だった。

弓木くんは勢い良く飛び出し、人混みの中に飛び込んでいった。