あたしの言葉にすっかり上機嫌になる朝登くん。

あたしと弓木くんのことを忘れて大股スキップをしてどんどん先を行ってしまう。

そういう天真爛漫なところが朝登くんの良さであり、鶴乃さんが密かに惹かれているところなのだと思う。

お似合いの2人だ。


「あのさ」


2人から幸せを分けてもらい、あたしの冷えきった心が多少温かくなってきたところで声を掛けられた。

カタカタと鳴る自分の下駄の音がはっきりと聞こえる。

あたしは右手に持っていたレジ袋を左手に持ちかえた。


「雨谷は欲しいものとかないのか?見てるだけで楽しいって...まぁそれでも良いとは思うけど、なんか、その...本当にそれでいいのかって俺達は思うんだけど」


ふぅっと一息吐いてみる。

なぜそんなに不思議がられるのかあたしにはむしろそっちが理解出来ない。

けど、黙り込んでも仕方がないので、あたしはしれっと話を反らして弓木くんと日葵について見たまんまの感想を述べることにした。


「弓木くんと日葵も良い感じだった。幼なじみの絆の他に...赤い糸見えた気がする。誰もが嫉妬するくらいのベストカップルになれるよ、君たち」


カタカタ...。

下駄の音が消えた。

あたしは足を止め、右隣に視線を移す。

すると、案の定、彼と視線がぶつかった。

覗き込んだ瞳の奥に赤い炎が見えた気がした。


「雨谷ってさ」


言いたいことがなんとなく分かる。

声のトーンで、

息遣いで、

分かる。


「ほんと、冷めてるよな」