「それより...」


キュッキュッと便器を拭き上げながら、鶴乃さんは口を動かす。


「向こうはどう?日葵、ちゃんとやってる?」


あたしはさっきあったことを簡潔にまとめて話した。

鶴乃さんはこんな場所でも口元に手を持ってきてうふふとお上品に笑う。

さすが格式高い御家のお産まれなのだと痛感させられる。

気品のある一挙手一投足に目を奪われていると、鶴乃さんは突然えいっと掛け声をかけて立ち上がった。


「日葵には任せておけないなぁ。ここも終わったし、後30分くらいで切り上げなきゃだから、お尻叩いてあげないと」

「夏休みの宿題を最終日までやらないでグータラしてる娘を叱る直前のお母さんの心境みたい」


あたしがふと思ったままを一気に口にすると、鶴乃さんはお腹を抱えて笑い出した。


「あはは!何それ?凪夏ちゃん、ほんと面白いっ...。あははっ。どうしよう...止まんないや」


何がそんなに面白いのか分からないけど、鶴乃さんはその後もしばらく笑っていた。