え。

嘘。

なんて思う間もなく、その時はやって来た。

デカイ図体の男子2人と美人に囲まれて人相の悪い低体温症のあたしが位置に着く。

恐らく弓木くん目当てで集まったであろうギャラリーに見守られる中、人生初のスーパーボール掬いへの挑戦が始まった。

日葵の巻き込み体質への怒りなどはなく、もはや諦念であたしはスーパーボールの流れを目で追った。

動きを見定めてひょいっひょいっとリズム良くボウルに入れていくのは、あたしではなく、意外にも戸塚くん。


「弟と妹に今まで散々やらされてきたからな~。こういうの得意なんだよ、おれ~」


戸塚くんがちょっと天狗になっていると、呆気なく穴が空いた。

残るは美男美女コンビ。

2人ともハイペースではなく、じっくりと吟味して取れやすそうなやつを取っている。

そんなに本気になるとは正直思わなかったのだけれど、よくよく思い返せば2人は弓道部。

集中力があり、尚且つ勝負師でもある。

2人が長期戦になる中、あたしはといえばファーストタッチさえ出来ずにいる。


「な~ちゃん、そろそろ入水して!」


日葵が煽ってくる。

これはもう選手交代するしかない。

出番がなくなり、暇そうにガムを噛んでいる戸塚くんに代わってもらおう。

そう、思ったその時だった。