食道を逆流して苦い液が喉までせり上がってきたのを感じ、あたしはバッグから水筒を出して一口口に含んだ。

おばあちゃんが作ってくれた梅ジュースはさっぱりしていて真夏の昼下がりには持ってこい。

身体に潤いが戻り、少しだけ思考が鮮明になった。

それからしばらく歩いてついにゲームコーナーにやって来た。

結局、長い戦いの末、最初は日葵のリクエストであるスーパーボール掬いに決まった。

日葵は袖をたくしあげて本気モード。

どう見ても小学生だと思われる3人兄弟に混じり、必死に目で追い、手を動かしている。

常に流れは一定のスピードで反時計回りに回っているから、取りやすいかと思いがちだけど、これが意外に難しいらしい。


「とりゃっ!」


勢い良く流れに向かっていくと、一発で穴が空いてしまう始末。

それでも懲りずに日葵は何度も挑戦する。


「あたしはこのためにバイトを頑張って来たんだ!」


こんなゲームに課金出来るなんてあたしには信じがたいことだ。

遠くから見ているだけで十分に楽しめる。


おりゃっ!

とりゃっ!

そ~れっ!


日葵のその掛け声を聞いているだけで自分も参加している気分になるのだから、やはり日葵はただ者ではない。

と思いながらぼんやり眺めていると、やはり彼女はただ者ではないと思い知ることになる。


「つるのん、日葵の代わりにやって~」

「え~、やだよ。私はヨーヨーが良いの。こんなところでお金使って...」

「いやいや、日葵のお金で!日葵全然ダメダメだから、つるのんに取ってもらうの!...あ、じゃあ、皆に100円ずつあげるから、皆で取って!しっくよろ~」