「お~い!な~ちゃ~んっ!」


大声を張り上げ、下駄なのに全力ダッシュをしてこちらに突進してくる人物が1人。

もちろん、日葵のことだ。

一目見るだけで元気が出そうな色合いの浴衣だ。

白地に向日葵がいくつも描かれ、所々朝露のような水玉が踊っている。

帯のターコイズブルーは爽やかで、明るく元気なイメージに知的で神秘的な真逆のイメージを付加することに成功している。

なんて小難しく言ったけど、結局は似合ってるってことだ。

いつもは緩い三つ編みの髪も今日はお団子スタイルでいつもよりも大人っぽい。

日葵に見惚れていると、鶴乃さん、朝登くんとも合流した。

鶴乃さんの浴衣は青や紫の鈴蘭が描かれていて帯がモスグリーンっぽいシックな浴衣だった。

で、男子陣はというと、まず戸塚くんのチェック柄の浴衣に驚いた。

男性の浴衣って無地とかストライプのイメージしかなかったから、チェックは奇をてらっていてなんか朝登くんらしいなって思った。

鶴乃さんも面白くて良いねって言っていたから、これが大正解というわけだ。

そしてもう1人...


「澪夜はさすがだよな!袴がサイッコーに似合うやつだから、浴衣も似合うだろうなって思ったら案の定だ。ほんと、お前には敵わねえよ。並んで歩くおれの身にもなってみろよ~」


と、戸塚くんに泣きつかれるほど、彼は大変良く似合ってる。

シンプルでモダンな紺地に薄くストライプの線が入った浴衣は、人々の視線を集める。

立ち止まり、振り返る人が大勢。

奇をてらわなくても、弓木くんは注目の的のようだ。


「朝登、うるせーな。それより早く行かないとますます混むぞ。混むとお前がやりたくて仕方ないって言ってた射的、出来なくなるけどいいのか?」

「いやいや、それはダメだ。よしっ!皆行くぞ!」