夏祭りには絶対浴衣で参加すること。

それが日葵との約束。

あの時名乗りではしなかったけれど、あたしも浴衣なんて持っていなかった。

つまり、働いて買うしかなかった。

バイト代の一部を自分の衣服代に使うのは一体いつぶりだろう。

中2くらいから全ての成長が止まってしまったあたしは、ヨレヨレになって、もうさすがに外出時に着られないだろうってなるまでは洋服を着続けることにしている。

つまり、衣服代を節約しているということ。

というのも全て将来のため。

特にやりたいこともないあたしは、どんな方向に転んでも対応出来るようにお金と知識だけは少しずつでも蓄えておこうって思ってる。

イコールバイトも勉強もきちんとやる、ってこと。

あたしは花火大会までの1週間はほぼ毎日シフトに入り、レジやら品出しやらを必死に行った。

一生懸命働いたお金が1年に1度しか着ない浴衣に消えていくのは倹約家(悪く言えばケチ)のあたしにとってはかなり痛い事実だった。

けど、おばあちゃんと久しぶりにお出かけ出来たのは良かった。

足腰が弱ってあまり外に出たがらない祖母が自ら一緒に行きたいと言ってくれるなんて珍しいことで、同時にすごく嬉しかった。

祖母があたしに似合う浴衣を浴衣コーナーの隅から隅まで見て選んでくれて、あたしの胸はぽかぽかと温かくなった。