ーードンッ!


背中を思い切り両手で突かれて、あたしは前につんのめった。


「おふっ...」


情けない声が出た。


「おっ、と...」

「あ、ごめん。ありがと」


こういう時、いつもあたしの腕を掴むのは、彼だ。

そして、注意するのは、彼女だ。

あたしが態勢を持ち直すよりも先に矢は放たれた。


「ちょっと日葵っ!いきなり押したら危ないでしょ?」

「あはは。ごめんごめん。な~ちゃんのこと驚かそうと思って。びっくりしてくれてありがとうっ!」

「だから、そういうことじゃないでしょ?」


日葵が謝るまでエンドレスになりそうだったので、あたしはここで手を打つことにした。


「鶴乃さん、あたしなら大丈夫だから。もういいよ」

「でも...」

「いつものことだし」

「凪夏ちゃんがそう言うならいいけど...」


いいけど...なんて言いながら日葵をちらっと睨むあたり、やはり許し切れていないのだと悟る。

しかし、積極的平和主義者のあたしがこれ以上の争いを認めないからここで終戦。

あたしにとって、ちょっとやそっとのイタズラは日葵なりのスキンシップだし、こんなのはしょっちゅうだから、もう慣れたこと。

今日だって、これからまた何回あるかわからない。

あたしが危機管理能力を最大限発揮すれば良いだけの話だ。

こういう子を友達に持った苦労として、ありがたく思うことにしている。