あたしは道の途中で立ち止まった。

あたしの胸に唯一残り続けているわだかまり。

月日の流れが忘れさせてくれると思ったのに、現実はその真逆で。

あたしは離れれば離れるほど、

時間が経てば経つ程、

忘れられなくなっていた。

しこりは徐々に大きくなり、全身を蝕み、あたしをあたしでなくする。

弱く弱く...する。

カッコ悪くする。

カッコ悪くてもいいのだろうか。

ここで、いっそ...

いっそ...

伝えられたら...。


あたしは夜空に浮かぶ三日月を見上げた。

やっぱり、どうしても、

言いたい。

伝えたい。

......止めよう、こんな自分。

終わりにしよう、この想い。


それが出来るのは、

今日今この瞬間しかない。


あたしは咄嗟にバッグからスマホを取り出した。

電話帳後ろの方の名前を見つけ、受話器ボタンを...押す。


ーープルルルル...プルルルル...


手元でスマホが振動している。

止めることも耳元に近づけることも出来ない。

震える右手を抑える左手も小刻みに揺れている。


どうしよう。

どうしよう...。

どうする、あたし...。


目を瞑り、音が消えるのを待っていたその時だった。