そして、最後はやっぱりあの場所に行きたかった。

あたしのとっておきの場所だ。


「ピョンタ、なんだよー。今日でお別れなのに素っ気なさ過ぎだろー」


ウサギにご挨拶をと思い、掃除しがてら来てあげたというのに、あたしに良く懐いていたピョンタが一生懸命穴を掘っているもんだから、あたしはがっかりしてしまった。

ツンデレなのかもしれないと諦め、あたしは掃き掃除とエサやりを慣れた手つきでとっとと終わらせ、1羽1羽に話しかけた。

動物と話せる能力なんてない。

そもそも動物はそんな好きな方じゃない。

それなのに、ここに居られたのは、ウサギ達が優しい目であたしを見つめていたから。

あたしを必要としてくれたから。

それに、あのパンッという鋭い音を聞きながらウサギを愛でている時間が尊いものだったから。

思い出すと胸がきゅっと狭くなる。

呼吸が上手く出来ない。

彼はずっと、近くに咲くヒマワリを遠くの山の桜を眺めるかのように見つめていた。

近くて遠いその距離を見つめるその姿に憧れを抱き、いつしかそれが恋に変わり...。

自覚してからは無意味だって思っても抗えなくて苦しんで、

絶対に届かない想いの行く先がなくて胸が張り裂けそうになったり...。

あたしの胸をぐらんぐらんに揺らしてくれてしまったその存在は、やはり遠いまま。

それでいい。

これからもずっと、変わらないまま。

変わらないんだ...。