そう言って日葵が残っているクラスメートのアルバムに片っ端からメッセージを書き始めたところで、あたしはお世話になったお三方のところへ足を運んだ。

窓の外から吹き込む春風に髪を靡かせ、一層麗しく見える王子様に声を掛ける。


「真昼くん」

「あ、凪夏ちゃん。さては、君もアルバムを汚しに来たのかな?」

「違う。あたしは一言3人に言いたくて」

「何々~?愛の告白?」

「なわけないでしょ。朝登くん、あたしに浮気するつもり?」

「は?!そんなわけあるかー!」

「だったら、茶化さないで聞いて」


朝登くんは授業中より真剣な眼差しを向け、王子様は微笑みを称え、月のような彼はぼんやりとまたヒマワリを眺めている。

あたしは、まいっかと思い、想いを一言に乗せた。


「今までありがと。それと、これからもよろしく」


あたしのその言葉に朝登くんはなぜか深く感動したようで、鼻をずるずるさせた。


「凪夏ちゃんにそんなこと言われるなんて思ってなかったから...嬉しい。素っ気なくされて、おれ嫌われてんのかなって悩んだ時もあったけど、こうして再会を誓い合って別れられるなんて最高だよ。ぐすっ...こちらこそありがとう」

「僕も凪夏ちゃんと出逢えて本当に良かった。感謝しかないよ。凪夏ちゃんのお陰で鶴乃と朝登の仲を見守る決心がついたし」

「そりゃどーも」

「おれもどーも」

「なんだそれ。ムカつく」


王子様の不機嫌顔も最後に拝見出来て良かった。

これで心おきなく学校を去れる。


と言いたいところだけど、話が上の空の彼には届いたか届いていないかなんて分かりっこない。

あたしは仕方なく、"虚ろな彼にもよろしく伝えておいて"と2人に頼んで、その場を後にした。