「つるのんとな~ちゃんとお別れなんて、やっぱり寂しいよ~」

「日葵はいいじゃない、澪夜くんと同じ大学なんだから」

「それはそれ。これはこれだよ~。だって日葵、大学で女の子の友達出来るか分かんないんだよ~。ちょっとは心配してよ~」

「心配しなくても日葵は自分からグイグイ行けるタイプだから大丈夫」


あたしは鶴乃ちゃんのその言葉にこくりと大きく頷いた。


「え~、2人とも酷いよ~!もっと哀しんでよ~。え~ん、え~ん!」


嘘泣きで鶴乃ちゃんを困らせている日葵を見て思った。

日葵に巻き込まれなきゃ、今のあたしは無かったんだもんね。

なんだかんだ言って、感謝してる。

それを言葉にするなら、今なんだ。

あたしはテストの度に基準となった教室の掛け時計を見つめた。

秒針が12に来たら、言おう。

5、4、3、2、1...


「日葵、ありがと。日葵と友達になれて良かった」


日葵も鶴乃ちゃんも15秒くらいぽかんとしていたけれど、突如糸が切れたみたいに日葵があたしに抱き着いてきた。


「な~ちゃん、ありがとうっ!日葵もな~ちゃんと友達になれて良かった。もう寂しいなんて言わない。だってこれからも一生友達なんだから」

「そうよ。これからも友達。しかも、日葵にはこの学校以外で同じ大学に進学する友達がいるじゃない」

「...あ」


思い出したみたいだった。


「琴葉ちゃんだっ!学年3位で演劇のコンテストで優勝してAO入試で合格しやがったあの美少女...。くぅ~っ!憎たらしいけど、仲良くしてやろうじゃないの!」

「そうしてあげて」


そう。

あたしは文化祭の後、鶴乃ちゃんと日葵にはあたしの過去を話したんだ。

絆奈とも紅野さんとも仲良くなってほしいって言ったら、文化祭の振替休日に学校の前で待ち伏せしようってなって行ったんだよね。

そっからは日葵のコミュ力のお陰でどんどん距離を縮め、クリパをやったり、初詣に行ったり。

カレシのいる日葵と鶴乃ちゃんには申し訳なく思うくらい同じ時間を過ごした。

そして今日もこれから両校の卒業式が終わり次第、予約済みのカラオケ屋で合流することになっている。


「泣いてらんないねっ!よし、日葵決めた。皆のアルバム汚してやるっ!」