「あたしを知って君はどうするの？あたしの何でもない君があたしのことを知る理由ってある？」

「...ある。理由はある。ただ、俺が知りたいんだ。今まで関わってきて謎だったことがたくさんある。その答えがあるなら、俺は...知りたい。知ってどうするか、どうなるかは分からないけど、それでも知りたい。だから、教えてほしい」

「そこまで言われたら教えてあげよう、なんて言わない。そんな単純なやつじゃないから、あたしは」

「じゃあ、どうすれば教えてくれるんだ？意味深な言動ばっかして俺を...俺をこんなに...こんなにしたのに、雨谷は何も教えてくれないのか？」


あたしは彼がこんなにあたしに興味を示していることに驚きすぎて逆に迷惑している。

そんなに言うなら、

いっそ...


「......なれ」

「えっ？」


聞こえるようになんて言ってない。

言うわけもない。


"好きになれ"なんて、言えない。


日葵のことが大好きなこの人に言えるわけない。

日葵とこの人...弓木澪夜の青くて純粋で真っ直ぐな関係に憧れている身から、言える言葉じゃない。

だから、あたしは...飲み込む。

飲み込んで、乗り越える。

この状況を切り抜ける。