彼女に幼なじみが居ると知ったのは、友達を始めて3日後のことだった。


な~ちゃんに会わせたい人がいる。

(ちなみに、日葵は2日目から急にあだ名で呼ぶようになった。)

食堂で皆でお食事するから、お弁当は持ってこないように。

と、日葵から何度も念押しされていたあたしは、その日だけは早寝早起きをサボることが出来た。

のは良かったのだけれど、あまり人脈を広げたくなかったあたしは、日葵の独断人脈広範波及行為を少し迷惑にも感じていた。


緊張より日葵が連れて来るのはどんな人達なのだろうという興味が胸の奥からドンドンと激しくノックしている。


早く来ないかな。


逸る気持ちを抑え待っていると、やがて、高くて透明感のある声があたしの鼓膜を震わせた。


「な~ちゃん!お待たせ~」


あたしの目の前に座ったのは、シャンプーのCMに出演しているのではないかと思えるほどさらっさらの黒髪の美少女...

つまり、渡来鶴乃さん。

許されるなら、"鶴乃様"とお呼びしたいほどの品位を感じる佇まいに、あたしは下品にも喉を鳴らすしかなかった。

で、その隣に100%サッカー部でしょうと思ったら、やはりサッカー部だったというオチの戸塚朝登(とつかあさと)くん。

いつもエネルギッシュで周りに自然と笑顔を波及出来る、あたしからすれば魔法使いのようなとんでもない力を持った人だ。

そんな彼は鶴乃さんのことが...と悟ったのも秒の出来事。

視線や仕草でわかる。

鶴乃さんがあたしに一生懸命自己紹介してる時、戸塚くんの鼻の下はずっと伸びてたし、照れ隠しに頭は掻くしで分かりやすすぎた。