あたしは一歩前進した彼らを見て安心すると、途中まで下りまた登ってきた歩き辛いったらありゃしない石段を駆け下りた。

真夏特有の、夜になるに連れ不快さを増す生ぬるい風が肌に触れる。

息を切らすあたしの呼吸をさらに妨げ、嘲笑うかのように何度も繰り返す。

あたしは屈してはならないと、大股で歩き出した。

胸に湧き上がってくる苦くて痛くて苦しい感情の波には飲まれたくなかった。

ずんずんと歩き続けてもどこにも辿り着かない気さえもして、漠然とした不安がさらに追い討ちをかける。

飲まれるな、追いつかれるな。

そう思えば思うほどに息が苦しくなって、

駅とは逆方向の角を曲がり、

遂に...立ち止まってしまった。

電信柱に背を預け、震える足で立っていられたのはものの数秒で、あたしは膝から崩れ落ちた。


安心した、なんて嘘だ。

本当は...辛かった。

ズキンズキンと痛かった。

口の中がゴーヤを噛んだ時よりも苦くなっても吐き出せなくて、

胸に行った苦みがさらにもやもやを増幅させた。

それで、分かったんだ。

いや、ずっと分かってるんだ。

本当は...嫌だって。

こんなんじゃ嫌だって。

好き嫌いでどうにかなっちゃうようなあたしじゃ嫌だって、

こんなに弱いあたしじゃなかったって、

何度も何度も思って。

でも変わってしまったものは、変えられなくて。

変えてしまったのも、自分で。

自業自得なのに、納得出来なくて。

納得なんて...出来ない。


「こんなんじゃ...やだ」


あたしのした選択は、全て自分を不幸へと導いてる。

他人の幸せを願うあまり、あたしは...不幸に。

いや、そうでもない。

周りの人だって幸せになんか出来てない。

あたしの選択は全て空回り。

誰も彼も自分も幸せに出来てない。

そんなあたしはやっぱり身の丈にあったことだけをして、細やかな幸せだけを祈って生きていくしかないのだろう。

これ以上失わず、1ミリでも大きくなって、ちゃんと立てるように、あたしは...頑張らなきゃ。


頑張って立たなきゃ。