あたしのその言葉に今度は彼の方が口を噤んだ。

痛いところを突かれるとこうなるのは、彼に限ったことではない。

人間誰しもあることだ。

あたしは初恋の相手と晴れて結ばれて浮かれているだけで、止まっている2人の関係をずっと焦れったく思っている。

こうなるならば、いっそ...。

なんて、考えなくもなくもなくもない。

あたしだって一応...

恋、してたんだから。


「じゃあ」


ピョン吉が小屋の端っこで一生懸命穴を掘るのをぼんやりと見つめていると、彼の声が聞こえ、ツツーッと視線を流した。


「何?」


彼の瞳を見つめる。

瞳の奥の炎は燃え滾っている。

あたしは確信した。

彼は...仕掛けるんだ。


「今年の夏祭りで...出来るだけ近付いてみる。今年は3日で日葵の誕生日と被ってるし、プレゼントもちゃんと用意する。だから雨谷、プレゼントをまた一緒に選んで...」

「行かない。あたしはノコノコと人のカレシを連れて出掛けたりしない。

クリスマスの時の言葉思い出して。
君の選ぶものなら、なんでもいい。

想いが通って今晴れてカップルになれたんだから自信持って。

君が思ってることは日葵だって思ってる。先に進みたいと思ってるなら進める。

2人は...2人はさ、そういう2人なんだから」

「...分かった。俺なりに頑張ってみる」

「うん。そのイキだ」