去年の4月7日。

入学式の翌日。

どんな学校でも、最初の1コマは教科書の配布や授業の進め方だったりする。

その次に自己紹介をするものだ。

そして、それはあたしの通う純光高校も例外ではなく、あたしは1年1組トップバッターで話をすることになった。

言うことはただひとつ。

だって、自己紹介だから。

端的かつ簡潔に。


「1番雨谷凪夏です。よろしくお願いします」


それだけ言って席に着いた。

当時担任だった国語の平戸先生は気を利かせたつもりで、"まだ時間あるわよ"と言ったのだろうけど、あたしには10秒で十分だった。

むしろ10秒もいらないくらいだった。

あたしの自己紹介を聞いている人なんていやしない。

大抵は席の前後や隣同士で自然と話すようになるのだから、無理に話さなくていい。

諦めというか、いつもの低体温症を発揮したまで。

しかし、あたしが冷めた感じでクラスの端っこにいると、それを良しとしない人物が近寄ってきた。

お弁当を出して食べようかと思った、まさにその時。


ーーバンッ!


「あのっ!」


その子は小さな両手のひらで新品の机を叩いた。

何が始まってしまったのかと、まだ出来立てほやほやのクラスが戦々恐々とする中、彼女はあたしの目をじっと見つめる。

その瞳の奥をあたしも覗き込む。


この子はきっと...誰より強い。

そして、誰より弱い。

そう、一瞬で分かった。


あたしは目を反らさず、彼女の発言を待った。

1、2、3...4の手前で彼女は口を開いた。


「私風羽日葵は、雨谷凪夏ちゃんと友達になります!絶交無効です!どうぞよろしくお願いしますっ!」