なんて、冷めた考えと諦念を軸に生きているあたしが何の意味もなさない面談を終え、廊下を早足で歩いていると、前方から見覚えのある顔が迫ってきた。


「あっ、な~ちゃ~ん!」


手をぶんぶんと大きく降ってあたしに突進してきたのは、言わずもがな日葵だ。

相変わらず毎日元気いっぱいでそれに最近はおのろけ全開だ。

会う度に、今日はこんなことを話したとか、次はどこどこに行くんだ~とか幸せ花盛りって感じで、正直ソロの身のあたしには堪える話ばかりなのだけれど、あたしはうんうんとちゃんと聴いている。


「な~ちゃん面談だったんだよね?どうだった?」

「どうもこうもない。あたしは泉英で決まりだから」

「そっか~。な~ちゃんはもう進路決めてるんだもんね~。あぁ、日葵はどうしようかな~」


日葵が身体をくねくねさせてこちらを見てくる。

救いを求める時にやりがちな動きだから、あたしはもう対処法を心得ている。


「カレシと一緒のとこに行けばいいじゃん」

「えっ?!い、いや、でも~」

「日葵別に頭悪いわけじゃないんだから、彼と一緒に勉強して一緒の大学受ければいいんだよ。きっと受かるよ」

「そ、そうかな~」

「そう。100パー、いや、120パーそう」

「な~ちゃんがそこまで言うなら...そうする!日葵、澪くんと同じとこ受けるっ!
...あ、でも澪くんの志望校どこだっけ?」


カノジョだというのに、把握していないことが多すぎる。

抜けが多いカノジョだとその隙を狙う人もいそうだけど、生憎お似合い過ぎて、皆そんな思考にも至らないっぽい。

つくづくラッキーで罪深いカノジョだと思う。

あたしはそんな日葵に、この前小屋の草むしりをしていた時に聞いたことをそのまま話した。


「日葵のカレシくんはね、第一志望が慶東大学経済学部で、第二志望が...」