ーーバシンッ!


一瞬何が起こったか分からなかった。

だけど、少しして自然と頬が熱くなり、視界が歪んできた。

熱を帯びた頬に生ぬるい液が流れ、じりじりと痛みを伴って染み込む。

あたしは左手で頬に手をやった。

こんな痛みはいつぶりだろう。

でも、あの時よりは全然痛くない。

こんなの全然痛くない。

痛くなんか...ない。

まだ...まだ話せる。

伝えられる。

諦めない。

だって絆奈だって諦めなかったんだから。

諦めないで進んで来たから、あの劇が出来たんだから。

あたしだけが後退していられない。

止まっていられないんだ...。

2年前のあの日から、動き出さなきゃ。


あたしは頬から手を話し、痛みの残る口を開いた。


「ごめんなさい。本当にごめんなさい。

あたしは高校入学から今までの絆奈のことを知らないから本来なら何も口出しすべきじゃないことは分かってる。

けど...絆奈があれだけ強くなれたのを見てカッコいいなって思って。

夢を叶えられたのが嬉しくて、ただその想いを絆奈に伝えたくて来ただけなんです。

だから、どうか...どうかあたしを許して下さい。絆奈に会えなくてもいいから、どうかこの気持ちだけ伝えてくれませんか?

お願いします...お願いします」