「皆にもプレゼントがあるんだ。だから、日葵1回離れて」


鼻をずるずるする日葵をなんとか宥め、あたしは皆にもプレゼントを手渡した。

ただし、1人だけはクリスマスプレゼントではなくて...


「弓木くんのは誕プレ。1日早いけど、ハッピーバースデー」

「えっ?雨谷俺の誕生日知ってたのか?」

「湧水くんが教えてくれた」


湧水くんが彼にピースサインをした。

彼はこれからするはずの告白からの緊張なのか、ガチガチに強張った顔を無理に動かし、ギリギリの笑みを見せた。


「じゃあ、あたしはここら辺でお暇します。皆楽しんで」


それだけ言い残し、あたしは日葵達の前から姿を消した。

日葵達が会場からいなくなった頃合いを見計らい、あたしは隠れていたトイレから出た。

スマホを見ると、絆奈の劇が始まる10分前だった。

日中より混んできてしまい、あたしは立ち見席に移動した。

あぁ、いよいよ...始まる。

2年ぶりに絆奈の姿を見る。

まるで耳元でドラムを叩かれているみたいに自分の鼓動が大きく聞こえる。

周りの人にまで聞こえているのではないかと心配になるくらいに激しい。

バクンバクン、バクンバクン...。

口から心臓が出そうなほどの緊張とはこういうことを言うんだ。

夏休みにジェットコースターに乗った時にもこんな感じになったけど、それとは比べ物にならないくらい、症状は深刻だ。

あぁ、気持ち悪い...。