一等地に聳えるビルの五階。そこに、編集部が存在している。彼らは圧力に決して屈しないのだ。エンターテインメントという魔性が、実体化し彼らを支配しているのだから……。
「おかえりなさいませ、編集長。サーッ! 例の人はどうでしたか? サーッ!」
「口を慎みたまえ。彼女こそがこの界隈に君臨する女王なのだよ。調子に乗ってると……クビにするよ?」
『例の人』という見下している言葉遣いが気に食わなかった。鋭い眼差しで、その編集者を睨みつける。魔性ほどではないが、上司特有のオーラで威圧していた。
「も、申しわけございません。サーッ! 女王様の席を用意してきます。サーッ!」
「ふん、分かればいいのだよ、分かれば。それと、これからは、サーッ! ではなく、イエス・ザ・マショウ! これを必ずつけることだ。いいかい? 忘れてはならぬぞ?」
「了解しましたであります。イエス・ザ・マショウ!」
「まぁ、嬉しいですわ。恥ずかしくて照れてしまいます。それでは、さっそく打ち合わせをお願いしますね?」
優しく頬に手を差し伸べるM。十八という若い女性の温もりが、編集者の心を惑わし始める。顔が紅潮し、気がつけばMの瞳を見つめていた。
その美貌はとても未成年とは思えないくらい魅力的であった。一瞬でその美しさに心が奪われてしまった。
「あ、あの……僕でよければ、担当になりますよっ! いえ、アナタの担当にさせてくださいっ」
「そう言ってくれるなんて嬉しいわ。でも、ダメよ。だって……ここで決めたら不公平でしょ?」
魔性を発動させ部屋を見渡すM。男女問わず彼女の力によって人形となってしまう。魂という名の心を彼女に奪われたのだ。
ここはもう……彼女の支配下となった。誰もMには逆らえない。いや、逆らえないのではなく、その身を捧げようとしているのだ。糸で操られたように、彼女の元へ向かう編集者たち。
こうなってしまえば、彼女の思うがままに動かせてしまう。誰もがMの一番になりたく、争いを始めようとしていた。
「争いなんてダ、メ。だって醜いじゃないの。でも、私を選ぼうとしてくれるのは嬉しいのよ。本当に嬉しいの。だから……」
魔性の投げキッス。その破壊力は……部屋に起きてる人がいなくなるほど強力なのだ。そう、キスひとつでこの部屋を安眠会場にしてしまう。
「さっ、編集長。打ち合わせをしましょうか。私の書籍化をするための打ち合わせね。二人っきりでよ」
「仰せのままに! わたくしはM様の奴隷ですからっ」
「ありがと。ちゃんと、小説を見るのよ? そしたら……そうね、アナタを私の側近にしてあげるわよ」
もはや、この部屋にまともな判断ができる者など存在しない。魔性の力で腑抜けにされ、彼女を神のように扱ったのだ。
「おかえりなさいませ、編集長。サーッ! 例の人はどうでしたか? サーッ!」
「口を慎みたまえ。彼女こそがこの界隈に君臨する女王なのだよ。調子に乗ってると……クビにするよ?」
『例の人』という見下している言葉遣いが気に食わなかった。鋭い眼差しで、その編集者を睨みつける。魔性ほどではないが、上司特有のオーラで威圧していた。
「も、申しわけございません。サーッ! 女王様の席を用意してきます。サーッ!」
「ふん、分かればいいのだよ、分かれば。それと、これからは、サーッ! ではなく、イエス・ザ・マショウ! これを必ずつけることだ。いいかい? 忘れてはならぬぞ?」
「了解しましたであります。イエス・ザ・マショウ!」
「まぁ、嬉しいですわ。恥ずかしくて照れてしまいます。それでは、さっそく打ち合わせをお願いしますね?」
優しく頬に手を差し伸べるM。十八という若い女性の温もりが、編集者の心を惑わし始める。顔が紅潮し、気がつけばMの瞳を見つめていた。
その美貌はとても未成年とは思えないくらい魅力的であった。一瞬でその美しさに心が奪われてしまった。
「あ、あの……僕でよければ、担当になりますよっ! いえ、アナタの担当にさせてくださいっ」
「そう言ってくれるなんて嬉しいわ。でも、ダメよ。だって……ここで決めたら不公平でしょ?」
魔性を発動させ部屋を見渡すM。男女問わず彼女の力によって人形となってしまう。魂という名の心を彼女に奪われたのだ。
ここはもう……彼女の支配下となった。誰もMには逆らえない。いや、逆らえないのではなく、その身を捧げようとしているのだ。糸で操られたように、彼女の元へ向かう編集者たち。
こうなってしまえば、彼女の思うがままに動かせてしまう。誰もがMの一番になりたく、争いを始めようとしていた。
「争いなんてダ、メ。だって醜いじゃないの。でも、私を選ぼうとしてくれるのは嬉しいのよ。本当に嬉しいの。だから……」
魔性の投げキッス。その破壊力は……部屋に起きてる人がいなくなるほど強力なのだ。そう、キスひとつでこの部屋を安眠会場にしてしまう。
「さっ、編集長。打ち合わせをしましょうか。私の書籍化をするための打ち合わせね。二人っきりでよ」
「仰せのままに! わたくしはM様の奴隷ですからっ」
「ありがと。ちゃんと、小説を見るのよ? そしたら……そうね、アナタを私の側近にしてあげるわよ」
もはや、この部屋にまともな判断ができる者など存在しない。魔性の力で腑抜けにされ、彼女を神のように扱ったのだ。