「それで……M様。書籍化の件ですが、すべてわたくしにお任せください。必ずやご期待に添えてみせます」
「うふふ、私を絶望させないでね? もし、失敗なんてしたら……分かっているわよね?」
「もちろんにございます。神に誓って、いえ、M様に誓ってどんな手段もいとわないです」
本格的に動き出したM。編集長を操り、編集部にその名を轟かせようとする。彼女の瞳は魔眼と呼ばれている。普段は黒のカラコンで誤魔化している。
しかし、実際の瞳は……左は人の心を凍らせる青、右は情熱を宿らせる赤なのだ。カラコンがあるからこそ彼女の力は半減される。もし、カラコンを外し封じられた力を解放でもしたら……。きっと、傾国すら簡単にできてしまう。
「M様、ここがわたくしが務めている出版社にございます。ここを自分の会社だと思い遠慮なく……」
「あら、編集長ごときに、そこまでの力なんてあるのかしら? それとも、私を騙そうだなんて……まさかしてませんよねっ」
「滅相もございません。わたくしは、M様に忠誠を誓った身。ご命令とあれば、妻子すら捨てる覚悟がございます! この命はM様の自由にしてよいモノなのです」
編集長の瞳にはMしか映っていない。彼女こそが絶対の存在であり、心から崇拝しているのだ。尊敬に年齢など関係なし。Mは今年で十八となった。一方、編集長は五十路近くの齢であり資産も豊富。
つまり、ふた回り以上の差がある。それでも、編集長は片膝をつき彼女への忠誠心をみせていた。目には見えぬ尻尾を振り、ご主人様に従う犬のように……。
(この男……相当の資産を溜め込んでいるのかしら。ついでに、その資産も私がすべていただこうかしら。その方が……資産も喜ぶはずよ)
彼女は密かに編集長から資産まで奪おうと考えていた。今はまだ知られるわけにはいかない。少なくとも書籍化が決まるまでは……。
「ふふふ、大丈夫だから安心して? ちゃんと信用してるから。今は、ね?」
「なんたる有り難きお言葉! 編集長の名にかけて、必ずや編集者どもにも忠誠を誓わせてやります。 イエス・ザ・マショウ!」
「心強いわね。では、私の編集部もすべく参りましょう」
二人は出版社へと足を踏み入れる。笑い声が耐えない平和な場所。そこが、魔性という恐るべき存在により、支配されようとしていた。
「うふふ、私を絶望させないでね? もし、失敗なんてしたら……分かっているわよね?」
「もちろんにございます。神に誓って、いえ、M様に誓ってどんな手段もいとわないです」
本格的に動き出したM。編集長を操り、編集部にその名を轟かせようとする。彼女の瞳は魔眼と呼ばれている。普段は黒のカラコンで誤魔化している。
しかし、実際の瞳は……左は人の心を凍らせる青、右は情熱を宿らせる赤なのだ。カラコンがあるからこそ彼女の力は半減される。もし、カラコンを外し封じられた力を解放でもしたら……。きっと、傾国すら簡単にできてしまう。
「M様、ここがわたくしが務めている出版社にございます。ここを自分の会社だと思い遠慮なく……」
「あら、編集長ごときに、そこまでの力なんてあるのかしら? それとも、私を騙そうだなんて……まさかしてませんよねっ」
「滅相もございません。わたくしは、M様に忠誠を誓った身。ご命令とあれば、妻子すら捨てる覚悟がございます! この命はM様の自由にしてよいモノなのです」
編集長の瞳にはMしか映っていない。彼女こそが絶対の存在であり、心から崇拝しているのだ。尊敬に年齢など関係なし。Mは今年で十八となった。一方、編集長は五十路近くの齢であり資産も豊富。
つまり、ふた回り以上の差がある。それでも、編集長は片膝をつき彼女への忠誠心をみせていた。目には見えぬ尻尾を振り、ご主人様に従う犬のように……。
(この男……相当の資産を溜め込んでいるのかしら。ついでに、その資産も私がすべていただこうかしら。その方が……資産も喜ぶはずよ)
彼女は密かに編集長から資産まで奪おうと考えていた。今はまだ知られるわけにはいかない。少なくとも書籍化が決まるまでは……。
「ふふふ、大丈夫だから安心して? ちゃんと信用してるから。今は、ね?」
「なんたる有り難きお言葉! 編集長の名にかけて、必ずや編集者どもにも忠誠を誓わせてやります。 イエス・ザ・マショウ!」
「心強いわね。では、私の編集部もすべく参りましょう」
二人は出版社へと足を踏み入れる。笑い声が耐えない平和な場所。そこが、魔性という恐るべき存在により、支配されようとしていた。