手が空いているスタッフ総出でホテルのワゴン車に詰め込み、新居へと届ける。新居では不動産屋のスタッフとインテリアコーディネーターの彼女は待っていた。

「では、私たちはこれで」

「ありがとうございました」

 ホテルのスタッフは帰り、私だけ残る。

 私や残ったふたりの仕事はこれからだ。インテリアが揃ってから朝井様がこの部屋に入るのは、今日が初めてなのである。

「朝井様、いかがですか?」

 不動産屋の担当者と、美人インテリアコーディネーター、そして私の三人が固唾を飲んで朝井様の返事を待つ。

「うん。いいね」

 やった!

 思わず三人で目配せし合い小さくガッツポーズをする。

「よかったです」

 それから引き渡しの手続きなどを済ませて、私たち三人は帰ろうとした。

 これで朝井様ともお別れだ。

 寂しくないといえば嘘になるが、私たちはお客様とホテルのスタッフという関係だ。朝井様がホテルをチェックアウトしたからには他人でしかない。