「悪いが、夜勤明けでね」

 私の言葉を遮った朝井様は、これみよがしに額に手をあてたと思ったら、あくびを隠すように手で口を覆う。

「し、失礼しました。では」

 居たたまれなくなったのだろう。彼女はスッと立ち上がって頭を下げた。

 申し訳なさでいっぱいだ。忙しいのにわざわざ来てくださったのに。

「あ、あのせめてコーヒーを……」

「いえ、失礼します」

 彼女の後を追い、深々と頭を下げた。

「申し訳ありません」

「いえいえ、むしろ燃えます」

 えっ? 失礼極まりないあの態度で怒らないんですか。

「必ず朝井様の気に入っていただけるよう、全力で取り組みますよ」

 絶対に私を振り向かせてみせるわ! と、聞こえるのは気のせいか。瞳の中にメラメラと炎を燃やし、彼女はスタスタと歩き出す。



 やる気を削がれたわけじゃないようだからよかったものの。

「はぁ」