「朝井様の方でお急ぎと伺いましたので優先させていただきます。ちょうど今の仕事は時間に余裕がありますし」

 うんうんと、私は隣に座る彼女に見惚れながら大きくうなずいた。

「そうですか。それはよかった」と、朝井様。

 その調子。ではこの先はおふたりでと私が腰を浮かせようとしたとき。

「夕月さんにすべて任せてありますので、あとは彼女に聞いてください。よろしくお願いします」

 私より先に朝井様がソファーから腰を浮かせた。

 口調は丁寧だが、用事は終わったから、俺は戻ると言わんばかり。

 ちょ、ちょっと待ってください。嘘でしょ?

 紹介してまだ五分も経っていないじゃないですか!

 焦りながらそっと隣を見ると、麗しの彼女は、信じられないというふうにポカンと口を開け。瞼をパチパチと瞬かせている。

 私だって信じられない思いだ。彼女の気持ちはよくわかる。

 これはまずいと咄嗟に引き止めた。

「せ、せっかくですので朝井様、プランをご覧になってはいかがですか? ご希望など直接」