この人にお願いすれば、間違いなく素敵な部屋になるだろうと確信を持たせるくらいセンスのいい人だ。服装もおしゃれだし、艶めく長い黒髪を片方だけ耳にかけていて、その耳からは揺れるイヤリングが輝いている。

 私は仕事柄、目立つアクセサリーや指輪は禁止だ。彼女のような素敵なネイルアートもできないから、余計に憧れる。

 是非、彼女に朝井様の部屋をコーディネートをしてほしい。

 膝に額がつくほど深く頭を下げてお願いする。

「なんとかお願いできないでしょうか。三十代のお医者様でなにぶん忙しく」

「お医者様、ですか」

「ええ。朝井様は、青扇記念総合病院の心臓外科医です。本来なら直接お願いするところですが、時間が取れず申し訳ございません」

 女性は私が渡した資料を手に、しばし沈黙する。

 その資料には、朝井様が購入すると決めた部屋の写真などが印刷してある。

「おひとりでお住まいですか?」

「ええ。そう聞いています」

「わかりました。お引き受けしましょう」