心臓外科医の朝井先生と口にするだけで、看護師さんに警戒される話もした。

「ただのファンだと思われちゃったみたいで」

「へえー。でもわかるな。あんなにイケメンでおまけに独身。心臓外科医だなんて。モテない理由がないもの」

 私もうんうんとうなずく。

「おまけにね、朝井様のご実家は大きな病院らしい。地域で有名な総合病院だって」

 目を丸くした美江ちゃんが大きく息を吐く。

「なんなのそれ、もうため息しか出ないような経歴の持ち主じゃん。まあ確かにあの若さだし心臓外科医って言うだけでスイートルームのレジデンシャルにはなれないもんね」

「そうなのよ。只者ではないと思ったけど、びっくりよ」

 言うだけ言ってしゃべり疲れた私は、冷めたコーヒーを一気に飲んだ。

 朝井様の経歴だけで一晩話し続けていられそう。

「まあでもさ、楽しんじゃえばいいんじゃない? 豪華な新居探しなんてそうそう経験できないし」

「そりゃそうだけど」

「二、三件に候補を絞って、最終的には朝井様に選んで貰えばいいわけだしさ」