リシュエル王国の王族には、最低でも二人以上の子をつくる義務がある。

 一人目は世継ぎとして。二人目はヴォラティル魔導書院の院長にするためだ。

 ヴォラティル魔導書院には、莫大な魔力が必要とされる。

 魔導書院を守る魔法陣、それから魔導書を鳥の姿に変えておく魔術。それら全てをたった一人で背負えるのは、王族しかいなかった。

 アルフォンスが生まれてから十二年。

 ヴォラティル魔導書院の院長が、後継者を求めて騒ぎ出した。

 だから両親は、十二年もたってから、思い出したようにエリオットをつくったのだ。

 エリオットがそう言うと、優しい兄は決まって「それは違うよ、エリオット」と悲しく笑っていた。

 けれど、エリオットはその通りなのだろうと思っている。

 だって彼は、両親とろくに会話もしたことがないのだ。