ハンカチが間に合わず、カーディガンの袖口で慌てて涙を拭う。

振り返ると、三澄くんが扉を開けたまま立ちつくしていた。


「……ほんとにきたんだ」


彼の口からこぼれた第一声は、あまりの言い草だった。


「なにそれ。三澄くんが言ったんでしょ、待ってるって」


涙を見られてしまったか気にする前に、思わず言い返す。


「ごめん。HR(ホームルーム)が、長引いて」


返ってきたのは、予想外の素直な謝罪だった。

さっきまで三澄くんに対して抱いていた不満が、ぷしゅーっ、と。
空気の抜ける風船みたいに、あっさりとしおれていく。


「……いいよ。さっききたばっかりだから」


わたしは三澄くんから顔を背け、グラウンドへと目線を戻した。

こっそり鼻をすすり、涙声を整える。