窓際に置かれたスツールを見つけ、腰掛ける。

外を眺めると、少し離れた先に、フェンスに囲まれたサッカーグラウンドが見えた。

隅のほうに、部員たちが少しずつ集まりだしている。

遠くからでも立ち姿や練習着で誰が誰だかわかってしまい、なんだかおかしかった。


……綾人と可奈ちゃんは、着替えているころかな。


そのまま、グラウンドの様子からしばらく目を離さないでいたけれど、ふたりの姿は、まだ現れない。



「……逃げてきたのにな」


ぽつりと呟いて、窓枠に肘をつく。


ここからでも見えちゃうかもしれないなんて、……最悪だ。


……いつも通りに、できるつもりだったのに……。


心配してくれたふたりに嘘なんかついて。
弱い自分が情けなくて……、再び、目の奥がじわりと熱を帯びた。

ぼやけた視界に、ぐっと唇を噛む。


――途端に、静寂を破るように聞こえた物音。
誰かが、扉を開けた音だった。

驚いて瞬くと同時に視界が晴れて、ポタポタ、と窓の桟に雫が落ちた。