別の階段を使い、1階へと降りる。

保健室まで繋がっている廊下を途中で曲がり、渡り廊下を駆け抜けた。


左手に現れた、ベージュの開き扉。

鍵がかかっているかも、なんて考えもなしに、わたしはそこへ逃げ込んだ。


……ここにはこないって、決めたのに。

逃げる先を考えたとき、どうしてか、勝手に足が向かってしまっていた。


扉を閉め、寄りかかる。

西に傾きかけた柔らかい日差しが差し込む美術準備室には、誰もいなかった。


——待ってる、って、言ったくせに……。


わたしの乱れた呼吸と、開いた窓から入り込む心地よい風が、静かな室内の空気を揺らす。

荷物を机の上に置き、わたしはゆっくりと足を進めた。