「今日、ちょっと、……お腹、痛くて」

「うそ、大丈夫?」


可奈ちゃんまで、心配そうにわたしを覗き込んでくる。

それから逃げるように、……涙ぐんでいる目を隠すように、わたしは俯いた。


「……やっぱり部活、休もうかな」

「無理すんなよ。部長と先生には、俺らが言っとくからさ」


そっと後ずさり、綾人から距離をとる。

わたしに触れていた手が、静かに離れた。


「可奈ちゃん。迷惑かけるけど、ごめんね」

「なに言ってるの、わたしのことは気にしないで。ゆっくり休んでね」

「……ありがとう」


なんとか涙を堪えて、最後に、必死に笑顔を作った。

不安げなふたりの視線を背中に受けながら、……わたしはパタパタと足音を立てて、その場から逃げ出した。