1階美術室の窓からの眺めは、あまりいいとは言えない。
はじめは大して気にならなかったはずの景色を、そう思うようになったのは、いつからだったか。
次第に聞こえてきたサッカー部員たちの声に、俺はそんなことを考えた。
外の賑やかさに、……徐々に心が乱されていく感覚。
我慢ならず、置いたばかりの荷物をそのままに、踵を返す。
「……新くん? どこ行くの?」
「ちょっと」
隣で油絵の道具を広げていた友人に短く返して、俺は美術室を出た。
広い教室に彼女ひとりを残すのは気が引けたけれど、どうせ、今日は思うように手が進まないだろう。
……目を閉じれば、嫌でも浮かんでくる。
『上村さんのこと、もう描けない』
俺が放ったその言葉に対する、今にも泣き出しそうな上村さんの表情。
逃げるように去っていく後ろ姿を、今日は追いかけることもせずに、ただ見ていることしかできなかった。
……そもそも、追いかけたとしても、突き放した張本人である俺には、どうすることもできないのだけれど。