わたしはキョロキョロと室内を見回して——、ふと、後方の棚に置かれた、見覚えのある鞄を見つけた。
——あれは、三澄くんの……。
「もしかして、探してるの、……新くんですか?」
荷物を見つめていたからか。
察したように問いかけられ、わたしは、もう一度彼女を見た。
「今日はなんだか、気分が乗らなかったみたいで、だいぶ前に出ていっちゃったんです。どこに行ったのかまでは、わからないんですけど……」
——よかった。
まだ、帰ってないんだ。
「ありがとうございます」
ぺこり、と女の子に向かって小さくお礼をして、わたしはキャンバスをしっかりと抱え直す。
廊下に向かって、美術室の中を進んでいき、
「あの」
後ろから追いかけてきた声に、足を止めた。