「……」


わたしは、濡れた頬を無造作に拭った。

キャンバスを胸に抱いたまま、よろよろと立ち上がる。

机の上に置かれた鍵を掴み、スカートのポケットに入れた。


……同じ後悔は、もう繰り返したくない。

今度こそ、逃げないで向き合わなくちゃ。


この想いが、叶わないものでもいい。

傷つくだけだとわかっていてもいい。

このまま終わらせたりなんて、したくない。


——三澄くんのことを好きな気持ち、わたしは、最後まで大事にしたい。



呼吸を整えるように、大きく息を吐き出して。

わたしは、美術室へとつながる扉に、震える手を伸ばした。